師走の晴れた日に燧灘の漁港を訪ねた。
港から30分ほど沖に出たところで、船から網を下ろす。
「西条市の燧灘はプランクトンが豊富やから」
網を下ろしながら語り出したのは、壬生川漁協の近藤高行さん。
ショベルのような爪がついた地引き網で
20mくらいの水深を25分ほど船で引く。
網を引くのは、漁師歴6年の近藤高行さんと、
漁師歴32年の近藤さんのお父さんの親子だ。
最初の網で小型の渡り蟹が捕れ、すぐに蟹の爪にバンドを巻く。
その理由を尋ねてみると
「蟹同士が互いの爪で喧嘩し、傷口から鮮度が落ちるから。」
なるほど。説明する息子をお父さんは黙って見守っていた。
網を引いては獲れた魚やイカなど仕分けをしていると
カモメの群れがやってきた。
海に戻す魚などを狙っているそうだ。
渡り蟹の乱獲防止策として、近藤さんたち青年部は
卵を抱くメスを他の漁師から買い取り、海へ戻す活動をしている。
そんな話を聞きながら最後の網をあげた時、
そこには、ブランドとして出荷できる渡り蟹が入っていた。
「今年一番のサイズですね!」と語る笑顔に
筆者もこの漁師たちの明るい未来を感じた。