VOL.8 サワラの流し網漁を訪ねて 新居浜漁業協同組合

五月末の早朝、燧灘(ひうちなだ)にある新居浜の漁港を訪ねた。

「まだ二年目の、脱サラ見習い漁師なんよ!」

そう語り出したのは、新居浜漁協の飯尾博史さん。

父親の跡を継いだ、地元思いの若い漁師。

いろいろな話を聞いているうちに

サワラ漁のベテラン漁師が帰港した。

早速、話を聞く。

流し網漁は、1㎞の網を約1時間半かけて巻き上げるらしい。

魚が多く掛かっているときは2時間もかかる。

これだけ大きいサワラが掛かるのだから当然だ。

また、漁は4月と5月に夕方5時から早朝5時まで続く。

ある意味、新居浜「春の風物詩」と言えるかもしれない。

話を終えたベテラン漁師は、明るい顔で立ち去った。

「サワラは5月で終わりやな」と、

競り人の言葉が聞こえてきた。

「せっかくやから、競りも見ておいき!」と飯尾さん。

そういえば、いつの間にか仲買人が集まって来ている。

「スーパーに頼まれとるもんを買わんといかんけんなー」と

にぎやかな声がどんどん広がる。

そして競りが始まり、飛ぶように売れていくサワラ。

朝焼けに染まった鰆は

文字通り各家庭の食卓に、瀬戸内の春を運んでいる。