五月末の早朝、燧灘(ひうちなだ)にある新居浜の漁港を訪ねた。
「まだ二年目の、脱サラ見習い漁師なんよ!」
そう語り出したのは、新居浜漁協の飯尾博史さん。
父親の跡を継いだ、地元思いの若い漁師。
いろいろな話を聞いているうちに
サワラ漁のベテラン漁師が帰港した。
早速、話を聞く。
流し網漁は、1㎞の網を約1時間半かけて巻き上げるらしい。
魚が多く掛かっているときは2時間もかかる。
これだけ大きいサワラが掛かるのだから当然だ。
また、漁は4月と5月に夕方5時から早朝5時まで続く。
ある意味、新居浜「春の風物詩」と言えるかもしれない。
話を終えたベテラン漁師は、明るい顔で立ち去った。
「サワラは5月で終わりやな」と、
競り人の言葉が聞こえてきた。
「せっかくやから、競りも見ておいき!」と飯尾さん。
そういえば、いつの間にか仲買人が集まって来ている。
「スーパーに頼まれとるもんを買わんといかんけんなー」と
にぎやかな声がどんどん広がる。
そして競りが始まり、飛ぶように売れていくサワラ。
朝焼けに染まった鰆は
文字通り各家庭の食卓に、瀬戸内の春を運んでいる。